Harm reduction (実害軽減措置。参考 http://www.health.gov.bc.ca/cdms/harmreduction.html
) とは、現状を受け入れた上で、そこに発生している実害の抑制をする考え方です。DTESでは特に、注射針の使い回しによるAIDS患者の増加、不衛生な環境で薬物注射を行うことにより発生する感染症、過量の薬物自己投与による死亡などが大きな問題となったため、これに歯止めをかけるために「誰もが安全に注射ができる場所」が設置され、これが「Insite」という施設です。Insiteでは、清潔な脱脂綿と注射針が利用者に提供され、これらを用いて薬物注射を行ったあと、使用済の注射針は適切に廃棄できる環境が整っています。看護師が常駐しており、個別のブースで薬物注射をしている人を監視し、薬物注射そのものに慣れていない人には、安全な注射方法を指導し、また過量投与が認められた場合には救急の処置を行うことができる体制が整っています。一般的に日本人的に理解に苦しむであろう点は、違法薬物がこの地域では極端によく出回っていること、またInsiteでは違法薬物の注射行為そのものを容認している点でしょう。もちろんこのような施設は今も賛否両論です。しかし、ハームリダクションの考え方では、これらを容認しないことによって生じるAIDSの更なる蔓延等の予防が優先されます。
DTESは世界一住みやすい街とも称されたバンクーバーのイメージを一瞬で吹き飛ばすほど雰囲気が特異で、普通に通りを歩くだけでもかなりの勇気がいるものです。この上、薬物を自己注射している人たちを目の前にし、さらに注射後に気分が高揚しているInsiteの利用者のそばを通って施設の見学をするのは結構緊張しました。しかし、このような場を目の当たりにすることで、普段薬局で扱うメサドンを服用する患者さんには、精神的に少し近づけた気がしました。もちろん本格的に薬物からの離脱を選んだ場合、メサドン以外にも様々な薬も関ってきますから、これらのついてよく知っておくことは非常に有益です。
薬剤師はどこへいっても常に勉強、一生勉強するものであることを再認識しました。
以下の資料、是非参考にしてください。
●ビデオ(実際の注射シーンも含まれていますので心の準備を)
Insite - Not Just Injecting, But Connecting
●CTVニュース
http://www.ctvnews.ca/health/health-headlines/harm-reduction-more-effective-than-war-on-drugs-study-1.1339700
●文献(Lancet)
http://www.communityinsite.ca/injfacility.pdf
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