2013年10月29日火曜日

Birth controlについて12 (経口以外のルート....IUD)

IUDとはIntrauterine Device子宮内装具のこと。日本でも2007年より「ミレーナ」が販売されていますし、これに伴いインターネット上では日本語で詳しい情報を得ることができますので、ご存知の方も多いと思います。IUDには2種類あり、①ホルモンベースのIUD(Mirena) ②銅ベースのIUD(Nova-T or generic)です。

①のホルモンベースのIUDですが、Mirenaがこれに該当し、英語ではマイリーナという発音になります。日本語ではレボノルゲストレル放出子宮内避妊システムとよばれるようですが、つまりT字型の器具を子宮内に装着し、levonorgestrelを子宮内に放出します。

一度装着したら5年間有効です。一度の出費は全く保険がなければ350ドルくらいしますが、一年に換算すれば70ドル、これは1ヶ月あたり約6ドルということになりますから、激安といえます。

コンプライアンスの心配がないのは何よりの利点です。はじめの3~6ヶ月はやや出血が増えるかもしれませんが、長期に渡ってはむしろ出血を抑えるために使用されます。性交などの刺激によってIUDがはずれることはほとんどありません。

バイエル医療関係者向け情報
http://www.bayer-hv.jp/hv/products/product.php?cd=59

 ②の銅ベースのIUDは日本にもあり(商品名ノバT)、カナダのものと同じ(Nova-T)ですが、カナダにはジェネリックのブランドが存在します。銅の殺精子効果がメインの機序ですが、最近はほとんど処方されなくなってきたように感じます。日本語での説明もありますから、一度確認しておきましょう。

ノバT製品情報
http://www.femalecare.jp/hv/member/femalecare/vip/product/product03.php

BC healthlink IUD for birth control
http://www.healthlinkbc.ca/kb/content/otherdetail/tw9516.html

2013年10月27日日曜日

Birth controlについて11 (経口以外のルート....注射)

カナダには避妊のためにprogestin (medroxyprogesterone acetate 150mg) の注射があります。

商品名はDepo-provera。12週間おきの筋肉内注射なので、ピルのような飲み忘れの心配がなくなります。成分としてはprogestin単独なので、エストロゲンを服用することに不向きな人には良いオプションになります。つまり、喫煙する人、35歳以上の人、抗痙攣薬を飲んでいる人が該当します。また鎌状赤血球病、授乳中、子宮内膜症の人にとっても選択肢の一つです。

http://www.sexualityandu.ca/health-care-professionals/contraceptive-methods/injection-depo-provera

2013年10月24日木曜日

Birth controlについて10 (経口以外のルート....patch)

パッチ(=貼付剤)型は一品目のみで、これはEVRAという商品名で販売されています。
ホルモンとしてはethinyl estradiolとnorelgestrominのコンビです。

生理の初日または最初に日曜日に貼付します。1週間に一回パッチを新しいものに張替え、これを3週間続けます。そのあと1週間のパッチ貼らない期間をはさんで、また新しいパッチを貼り、このサイクルを繰返します。

貼付部位は下腹部、上腕部、背中などから選べます。

Rxfilesによれば、9週間~12週間の連続使用も可とありますが、個人的にはこのように使用している人はまだ見たことがありません。

パッチの避妊薬なんて本当に大丈夫?という方、パッチを完璧に使用した場合の妊娠率は0.3%程度で、これは経口のピルと同程度です。

このタイプの避妊薬を使いやすいと思うかどうかは本当に人それぞれですね。



2013年10月23日水曜日

Birth controlについて9 (経口以外のルート....Nuvaring)

英語でcontraceptive vaginal ringと呼ばれるものです。日本語にしたら膣内避妊具といった具合でしょうか。

Nuvaringは膣内で120 mcgのetonogestrel(progestin)と15 mcg/dayのethinyl estradiol (estrogen)を継続的に放出することで避妊効果を発揮します。作用機序としては、卵巣からの排卵の阻害、そして子宮頸からの粘液の性質を変化させることにより精子の動きを鈍くします。

経口のピルなどを服用していない人が初めて使用する場合は、生理の1日目から5日目までの間に膣内に挿入し、3週間そのままの状態にしておきます。3週間経ったらリングを指に引っ掛けて取り除き、1週間の休止期間(ring-free period)を置き、その後新たなリングを装着します。

リングを取り除いたら、2~3日以内に生理が来ることになっています。

新しいリングは、古いリングを取り除いてから1週間たったら、たとえ生理が続いている状態であっても挿入しなければなりません。

すでにピルを服用している人は、周期のどこからでもスイッチできます。

避妊の効果は98-99%とされています。

このリングの良いところは、ピルのように毎日服用する必要がないことです。

もちろんカナダで薬剤師を目指している人は、この全てを英語で説明する必要があります。挿入時の体のポジショニングも含めてです。添付文書を参考にして、更に詳しい説明ができるようがんばりましょう。私はCP3の実習中にこの処方せんに当たって、苦労したのを覚えています。インパクトが強いので、一回覚えたら忘れません。日本ではみかけない薬の典型でした。

http://www.merck.ca/assets/en/pdf/products/ci/NuvaRing-CI_E.pdf

2013年10月21日月曜日

Birth controlについて9 (その他の副作用)

今回は血栓塞栓症以外の一般的な副作用についてまとめましょう。患者さんにざっと説明するべき項目といえます。

●Breakthrough bleeding
「破綻出血」と訳されます。実際に経験することのない人間としては、産婦人科医きゅーさんの説明が分かりやすいと思いました。http://ameblo.jp/kyusan0225/entry-11223634638.html
●Breast tenderness 乳房の圧痛
●Weight gain 体重増加
●Nausea 吐気
●Headache 頭痛
●Acne にきび(今までにお話したprogestinのアンドロゲン作用ですね)
●Mood changes 気分の変調
●Chloasma 辞書では肝斑 (かんぱん)と出てきます。皮膚の色素斑です。

副作用で患者さんを脅さないように気をつけます。また、ピルの種類を変えれば副作用を軽減できるかもしれませんから、この点も説明が必要です。少しずつホルモン活性の異なるピルが15種類以上も市場で販売されています

2013年10月18日金曜日

Birth controlについて8 (副作用...血栓症)

前回、第4世代のピルではprogestinによるandrogen作用を減らしたがために血栓症が起こりやすくなったという話をしました。そこで、血栓症について触れましょう。

簡単に血栓症と言っていますが、アルク辞書で調べるとthromboembolism【名】《病理》血栓塞栓症”です。これに絡めてよく出てくる単語はVenous Thromboembolism (静脈血栓塞栓症。略してVTE) しっかりと確認を。

90年代中盤までは、エストロゲンがVTEの原因だと考えられ、これによって低用量のピルが開発され、またprogestinが改良されていきました。ところが新しい世代のprogestinによってむしろVTEのリスクが増加しているぞという話で、諸々の報告があります。

今後触れていきますが、Evra(貼付型)やNuvaring(経膣型)の新しいタイプの避妊薬は、drospirenoneを含有していないにも関らず、VTEのリスクが増加するという報告もあります。

ピルによる血栓塞栓症の確立は、何も服用していない人の場合は年間1万人に4-5人、ピルを服用していると1万人に8-9人、参考までに妊婦では1万人に29人といった具合です。(Rx file 4th ed)




2013年10月14日月曜日

Birth controlについて7 (4th generation OCP)

4th generationと呼ばれるピルは、Yasmin, Yaz, Yaz Plusの3つです。Progestinにdrospirenoneを用いていますが、これは抗androgen作用をもつspironolactoneの誘導体です。

これまではいかにアンドロゲン作用を弱くするかがテーマでしたね。でもアンドロゲン作用を無くせばいいものになるかといえばそういうわけではありません。

今年ニュースでこれらのピルにより起こった血栓症から死亡が報告され、第4世代のピルの使用には注意深さが感じられます。

http://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/yaz-yasmin-birth-control-pills-suspected-in-23-deaths-1.1302473
http://www.theglobeandmail.com/life/health-and-fitness/health/yaz-yasmin-birth-control-pills-linked-to-23-deaths/article12469146/

ところでYazは24 active pills + 4 placebo pills と、かなりユニークな形態です。

Yaz Plusは0.4mgの葉酸を含有する更にユニークな商品ですが、この理由はピルを飲んでいるにも関らず妊娠してしまったときのためだそうです(!)。

2013年10月13日日曜日

セミナーのテーマ変更について(11月5日)

「カナダの薬剤師業務と継続教育について」に変更します。
場所は未定ですが、バンクーバー市内で午後1時半頃から約2時間を予定しています。
参加費10ドル。ご希望の方は、右のフォームからご連絡ください。
PEBC勉強中の方、カナダの薬剤師の仕事に興味がある方、どのような状況の方でもOKです。
宜しくお願い致します。


質問にお答えします

この場でちょっとした試験対策を書いたり、セミナーを企画したりしている中、ブログを通して質問を頂いたのでお答えします。

Q.UBC(ブリティッシュコロンビア大学)のCP3(Canadian Pharmacy Practice Program)に入って良かった事は何ですか?

A.2つの大きなポイントに分けられると思います。
1.同じ目標を持った仲間と勉強していけること。
それまで孤独に勉強をしてきた経験が長ければ長いほど、これを実感します。私自身ががそうでした。自分よりも勉強が浅い人、自分よりももっと沢山勉強している人、色々な人に出会います。時には試験に対する真剣度やスタンスの違いさえ感じることもありますが、最終的に合格したい部分は一緒です。情報交換、OSCEの練習相手にはもってこいです。

2.迷わずにそのガイドに従って進めばよいこと。
トロント大学のコースがモデルとなり開発されたUBCのCP3は、非常にバランスよく出来上がっています。コースのカリキュラムに従って勉強していけば間違いなくPEBCのテストに合格できるようになっており、実際多くのCP3の卒業生がCP3を巣立ち、薬剤師として活躍しています。CP3と同じレベルと期間でプログラムを提供している機関が他にあるかといえば、ありません。

Vさん、今回は質問ありがとうございました。

今後も一般的な質問にはブログ上で答えを共有していきたいと思います。

2013年10月11日金曜日

Birth controlについて6(3rd generation OCP)

3rd generationのピルには、Marvelon, Cyclen, Linessa, Tri-cyclen, Tri-Cyclen Loがあります。これらに含有されているprogestinはdesogestrelまたはnorgestimateで、いずれの薬においてもアンドロゲン作用は低くなっています。

それでいながら更にLinessa, Tri-cyclen, Tri-Cyclen Loは3相性triphasicの形をとり、アンドロゲン作用をより軽減させています。つまりこれらのピルはニキビで悩む人にとっての救世主的な役割を果たし、実際Tri-Cyclenはニキビ治療に正式な承認を得ています。

その他にニキビ治療に承認のあるもの:
Alesse, Tri-cyclen, Yasmin, Yax, Diane 35


2013年10月10日木曜日

Birth controlについて5(2nd generation OCP)

カナダで販売されている2nd generationのピルには、ブランドネームでAlesse、Triquilar、Min-ovralがあります。

このグループに用いられているprogestinはlevonorgestrelですが、こちらはECP(emergency contraceptive pillの略, morning after pillともいう)の主成分でもあります。

私の日常業務の範囲では「Alesse」は頻繁に処方されるピルの一つで、ホルモン活性はE+/P+/A++となっています。(E: estrogen, P: progestin, A: androgen, 参考: RxFiles 9th ed)

もしも全体のバランスとしてEstrogenが足りなければそのサインが出てきます。
  • early bleeding and spotting days 1 - 9
  • continuous bleeding or spotting
  • decrease in flow 月経血量の減少
  • absence or withdrawal bleeding 消退出血
  • nervousness 神経質
  • pelvic relaxation
  • atrophic vaginitis 萎縮性膣炎
  • vasomotor symptoms 血管運動症状

またprogestinが足りなくてもそのサインが出ます。
  • late bleeding and spotting days 10 - 21
  • delayed withdrawal bleeding


(OCP = Oral Contraceptive Pill)

2013年10月9日水曜日

コラム「お薬の時間ですよ」

ADHDと薬についての話をまとめたものが、2013年9月19日発売のバンクーバー新報第38号に掲載されました。オンラインで読むことができます。
http://www.v-shinpo.com/index.php?option=com_content&view=section&layout=blog&id=9&Itemid=8

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2013年10月7日月曜日

Birth controlについて4 (androgen effect)

前回"estrogenとprogestinのバランスによってホルモン活性(estrogen, progestin, androgen)が調節されています"と書きましたが、ピルにandrogenが入っているわけではありません。Progestin(黄体ホルモン)が、その化学構造によりアンドロゲン作用を示します。

(大学を出てから時間が経ち、またピルが滅多に出ないような薬局で仕事をしていたら、このようなことも一から頭に入れなおす必要が、私にはありました。)

First generationのnorethindroneとethynodiol diacetateは、progestin活性が強い=アンドロゲン活性も強。

バランスとしてAndrogen過多の場合、libido亢進、ニキビacne、多毛症hirsutismのような症状が見られます。
つまりピルを飲み始めた人にこれらの症状が見られたら、アンドロゲンが多いので、他のピルに変えましょうという話になります。

化学構造のおさらいはウィキペディアで。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Steroidogenesis.svg


2013年10月6日日曜日

Birth controlについて3 (types of progestin)

ピルにはestrogenとprogestinが入っています。
estrogenはいつもethinyl estradiolですが、progestinは種類によって世代分けがされています。

First generation...noerthindrone, ethynodiol diacetate
Second generation...levonorgestrel
Third generation...desogestrel, norgestimate
Forth generation...drospirenone

これらestrogenとprogestinのバランスによってホルモン活性(estrogen, progestin, androgen)が調節されています。

2013年10月5日土曜日

Birth controlについて2 (summary from healthlinkbc)

Healthlinkbcのまとめは大雑把でありながら、非常にポイントを得ています。まずはこのようなわけ方が出来ることを知ってください。

引用:http://www.healthlinkbc.ca/kb/content/drugdetail/te7768.html

Birth Control Pills, Patch, or Ring

Examples

Very low-dose pills
Generic NameBrand Name
drospirenone and ethinyl estradiolYAZ
levonorgestrel and ethinyl estradiolAlesse
norethindrone and ethinyl estradiolMinestrin

Low-dose pills
Generic NameBrand Name
drospirenone and ethinyl estradiolYasmin
levonorgestrel and ethinyl estradiolSeasonale, Seasonique
norgestrel and ethinyl estradiolLo-Femenal
Phasic pills
Generic NameBrand Name
levonorgestrel and ethinyl estradiolTriquilar
norethindrone and ethinyl estradiolOrtho 7/7/7
norgestimate and ethinyl estradiolTri-Cyclen Lo
High-dose pills
Generic NameBrand Name
ethynodiol and ethinyl estradiolDemulen
norethindrone and mestranolBrevicon
Note:
This is not a complete list of all brand-name birth control pills available.
Skin patch
Generic NameBrand Name
ethinyl estradiol and norelgestrominEvra patch
Vaginal ring
Generic NameBrand Name
ethinyl estradiol and etonogestrelNuvaRing

2013年10月4日金曜日

Birth controlについて1 (types of contraception)

PEBCのテスト対策だけでなく、薬剤師業務の一部としてこの分野の知識は必要です。色々な質問を受けますし、またこれらの商品は薬局で取り扱うからです。しかし日本人としてはどれだけカナダで新しい物・事を学ばなければいけないことか。専門的な参考書でなくても、BC Health Guideによいまとめがありましたので、この辺からみてみましょう。

薬局として様々な商品を扱うだけに、これら全ての質問に答えられなければなりませんし、とくにピルに関しては、質問の幅が広いです。

緊急避妊薬として、日本でもノルレボ錠0.75mgが2011年に認可されましたので、これらの存在は少し身近になったかもしれません。


2013年10月2日水曜日

苦手だった領域

ズバリ、ピル(経口避妊薬)です。日本の薬局(主に総合病院の門前)で仕事をしていたときには、それほど需要がある薬ではありませんでしたので、ほとんど知識がありませんでした。しかし、カナダでは女性が10代に入った頃からかなり多く処方されますので、薬剤師がピルについては何も知らないでは済まされません。例えそのとき受験したPEBCのテストに一問も出ていなくても、これを知らずに薬剤師の仕事は出来ません。ということで、今後しばらくこの領域をまとめていきましょう。