薬剤師だからといっても、実習生にモノを教えるプロであるというわけではありません。
なぜなら教育学の学位でも取っていない限り、薬剤師は「人にモノを教える」という訓練はしていないからです。患者指導というケースを除いては。しかし、この事実によって、薬局実習が時として悪夢のようになることがあります。
おそらくこれは英語という言語に基づく思考方法というか、慣習のようにさえ思えますが、英語では大体の会話において「それで、あなたはどう思う?」といわれる場面があります。そして、この質問は、一番手っ取り早いところで、アイエルツの面接にさえ登場します。XXXについてどう思いますか、あなたの個人的な経験を混じえてお話ししてください、といった具合です。通常は何も難しいことを聞かれているわけではありませんが、考え慣れない、または答え慣れないトピックについて聞かれることが多いので日本人は苦労するという、それだけです。
しかし、薬局実習で同じような質問を度々浴びせられたら、これは気が狂います。
といってしまうと、誇張表現のように聞こえるかもしれませんが、とにかくストレスが溜まることは確かです。なぜなら、外国人薬剤師が薬局実習に行ったら、ほとんどの場合、「それであなたはどう思う?どうしたらいいと思う?」の質問に対する正解を知らないからです。もしも正解ではない答えを言ったとしたら、「本当にそう思う?どうしてそう思う?」という、更なる質問攻めに遭います。そしてこれは本当にストレスです。一日中だけでなく、実習期間中、ずっとこれが続いた、という話を聞いたことがあります。
「見方を変えれば」ですが、これほどまでに考える練習をさせてくれる指導者は、そうそういません。これはかなりポジティブに考えたらの話で、しかも上手なフォローアップがあってこそ成り立つ考えです。
対極に立つのは、特に実習生にすることにコメントすることなく、好きなようにやるべきことをやらせて、不備があれば薬剤師自身がそれを修正し、その日のコメントを求められたら「まあ、そんな感じでいいんじゃない?」で済ます薬剤師です。このようなケースでは、実習自体は楽になりますが、自分で考える力や問題解決能力などはほとんどつきません。そもそもプリセプターが楽をしているか、忙し過ぎて実習生の指導が出来ていないかです。
理想となる=気の利いた教え上手の薬剤師であれば、どの辺までが実習生に分かっていて、どの辺から答えを必要としているかを見透かすことができます。だから誰もがそのような人について実習したいと思います。また実習で学んだことは、じかにOSCEに関わってくるともいえるので、質の高いトレーニングを受けたいのは当たり前です。(薬局実習→OSCEの順番を選んだ場合)。
問題は、そのような薬剤師がどこにいるかは不明で、たとえいたとしても自分を受け入れてくれる可能性も予測不可能であるということです。何せ実習先は自分の足で探し、何よりも自分を受け入れてくれる場所を探すことが優先されてくるからです。
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