前回の話を総合すると、要するに薬局実習は「めぐり合わせ」の要素が強くなってきます。日本人の感覚からしてやりやすいorやりづらい薬剤師がココにいる!といったを報告をこのブログにしてもらえれば、データベースでも作れるというものですが、いかんせんそこまで大量の日本人がカナダの薬剤師に挑戦し、薬局実習を経験しているわけではないので、これも現実には難しい話といえます。
ではここで、外国人薬剤師が薬局実習にスムーズに入れるように薬局業務の話をしておきましょう。
「薬剤師業務において、北米は日本よりもXX年も先をいっている!」と言われたのは、私がまだ大学生のころの話ですが、今もそのようなことをいう大学の先生はいるかは定かではありません。調剤薬局に限って言えば、日本でもカナダでも「小売業」であり、効率よくモノ=薬を売ることを専業とします。だからこの部分だけは、日本のXX年先を行くことはありません。
ただ、カナダの場合、薬剤師による予防接種が出来たり、処方せんの延長ができたり、また普段よりもちょっと多めの時間をとってメディケーションレビューといったコンプライアンス・副作用・相互作用等の確認をするという仕事があります。
薬剤師がこれらをするというのは、つまり政府がこのような薬局サービスに対して報酬を支払うということであり、だからこれを「日本より進んでいる」という場合もあります。ただ、特に近年の業務の変化は、薬価差益を無くしてそれを埋め合わせるためにこれらの導入されたという背景もあります。
ただ、どんな背景があるにしても、私のように日本で大学にいってからカナダへ来た人間にとっては、日本の薬剤師としては出来ないことがカナダでは出来るという事実が、なんとなく自由な気持ちにさせてくれることは確かです。
最近の日本では薬剤師による在宅業務が非常に盛んなようですが、これは私の現在の業務範囲には入っていません。つまり、日本の方がこのような業務に関しては「進んでいる」という見方もできます。カナダでもこのような仕事に対する報酬ができればいいなと思います。
前置きが長くなりましたが、本題の薬局業務の話です。通常薬剤師は処方せんを受け取り、処方内容について監査し、薬について患者さんに説明し、そして薬を渡したあとは副作用やコンプライアンスなどの確認のためにフォローアップします(実際は稀)。しかしこの字面に現れないのは、薬剤師がレセコンを操作して、用法・用量等の情報の入った「ラベル」を作成するという作業を、処方せんの受け取り段階からしていることです。片目でコンピュータのスクリーンを見て、もう片方の目で患者さんをみて(アイコンタクト!)、キーボードをカタカタいわせながら、口ではこの薬はXXの薬で(カタカタ)1日X回飲んでください(カタカタ)、XXといったような副作用がでることもありますが(カタカタ)そのときはXXするようにしてください(カタカタ)という感じです。
今では日本でもそのような流れで処方せんを処理する薬局もあると思いますが、それでも日本の調剤薬局では伝統的に事務さんが処方入力を担当する場合が圧倒的に多いので、レセコンを触ったことのない薬剤師(特に新卒)も多いと思います。
なのに、カナダで薬局実習を始めた途端、「いかにタイピングを速く正確に、しかも喋りながら出来るか?」がこれ以上なく重要なポイントになるとは、誰も教えてくれません。
あまりに大切なのに強調されることがなかったのでわざわざ繰り返しますが、人と喋りながらブラインドタッチで速くて正確なタイピングをできないと、薬局では仕事になりません。
最近の話の流れに合わせていえば、日本人薬剤師がカナダで薬局実習するにあたって、せめてブラインドタッチが出来ていないと、それ以外の例えばちょっとしたカウンセリングができたとしても、仕事が先に進みません。それでなくても永遠に終わることがなく、たまに意地悪でいっているのかと思えることさえあるプリセプターの質問攻めにあっているかもしれないのですから、コンピュータ操作なんて二の次のように思えます。
でも、これはタダの手作業ではありません。薬剤師による処方入力は、問題発見の機会であり、タイピングは薬剤師業務の要といってもいい位に大切です。これから実習に行かれる方は、英語のキーボードで練習しておきましょう。
注:処方入力と患者指導は別に行う薬局もあります。上の説明はあくまで私の勤務先での業務の流れです。また薬局によっては、処方入力がテクニシャンによって行われている場合もあります。
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